■ももクロの挑戦と成長がテーマ
ももクロの楽曲においては、グループ名やメンバーの個人名、色やマジックナンバーとしての「5」などが歌詞に盛り込まれることが多い。
これは初期のシングル曲である「行くぜっ! 怪盗少女」や「ピンキー・ジョーンズ」「ミライボウル」などに顕著だが、ほかにもアルバム収録曲である「全力少女」や「5 the Power」などにも見られる現象で、ももクロの楽曲には、「ももクロのキャラクターソング」としての側面が少なからずある。
「灰とダイヤモンド」は、そういった明示的な表現がないにも関わらず、ももクロのメンバー自身もスタッフもファンの側も、この曲がももクロ自身のことを歌っているというのが共通認識になっている。
それは、アルバムの曲順やコンサートで使用される際の位置付けや演出、感情をたっぷり込めて歌う姿、YouTubeやニコニコ動画に投稿されるファンのコメントなどから確認できる。
2013年5月のUstream放送「24時間いただきますっTV」では、深夜に残った百田夏菜子、高城れに、有安杏果の3人が、西武ドームで行われた自分たちのライブを見ながら踊ったりはしゃいだりの大騒ぎをしたが、「灰とダイヤモンド」が流れ出すと、慌ててモニタの前に並んで座って静かに見始めた。そして曲がクライマックスに達したとき、3人の目は完全にうるんでいた。そして曲が終わると以下の光景が映し出された。
百田 泣いてる!
高城 泣いているぜ、こいつ!
有安 (照れ笑いしながら、目頭をぬぐい、夏菜子にもたれかかる)


また、2014年7月に行われた無音Ustream放送による、「ももいろクリスマス2013」のDVD一斉鑑賞会においても、『灰とダイヤモンド』のときだけは、メンバー5人がいずれも静かに見入っていた。
■ぶつかりながらも ここにいる奇跡
また、佐々木彩夏は2013年5月に放送されたラジオ「ももクロくらぶxoxo」のももクロ5周年企画において次のように語っている。
佐々木 この間の西武ドームで『灰とダイヤモンド』を歌ってて、私のパートで「ぶつかりながらも ここにいる奇跡は」ていうフレーズがあるんだけど……なんか、本当に奇跡だな! って。
まさか人前で歌うとも思ってなかった私が、この3万人の前で歌って踊って。「ぶつかりながらも」っていうのは、メンバー同士のぶつかり合いもあるし、メンバー5人で壁にぶつかったこともあるしっていう、このワンフレーズに凄い感動しちゃって、自分で歌いながら。ほんとうにここにいるのは奇跡だなって。凄い、西武(ドーム)で感じました。
だから、これからも5周年で終わらないように、もっと10周年とか迎えられるように、長く長くみんなに愛されていけるような、そしてこの「ももクロ」っていう形は変わらずに、楽しくワイワイ、オバサンになっても続けていけたらいいなって、思います!
■そして、GOUNNへ
本曲は前山田健一が2013年中にももクロに提供した唯一の曲だが、作詞は只野菜摘が担当している。
「灰とダイヤモンド」というと、アンジェイ・ワイダ監督のテロリストの青年を主人公にした映画「灰とダイヤモンド」(1958年、ポーランド。英題:Ashes and Diamonds)が有名だが、映画では「灰」は無価値なもの(死やテロリズム)、「ダイヤモンド」は希少で価値あるもの(愛や希望)を示していた。
ももクロの「灰とダイヤモンド」の歌詞の場合は、「なんども生まれかわってる」「芽生えたての羽は」「次の空 めざした」というフレーズが、500年に一度、自らを燃やして灰の中から幼鳥の姿で蘇る不死鳥(フェニックス/火の鳥)の暗喩として感じられる。だとすると歌詞にある「灰の中のダイヤモンド」とは、不死鳥のように自らを燃やし尽くし何度も挑戦したあとに残る、人間としてまたはアーチストとしての本当の輝きを意味するのかもしれない。
さらに「灰の中のダイヤモンド」に続く「本物以外さがせない」の「本物」は、ももクロが初期から歌ってきたmihimaruGTのカバー曲『ツヨクツヨク』の「強く強く 心に刻む いつか本物になること」というフレーズのアンサーとしても機能している。
「閃光(ひかり) 夜明け リング」の「リング」は恐らく、宇宙から地球を見たときに、地球の向こう側から太陽が昇ってくるときに一瞬生じる荘厳な「ダイヤモンドリング」を表しているとともに、「リング=輪、繰り返し」のダブルミーニングとなり、次の「閃光(ひかり) 夜明け 輪廻」で、明確に仏教の輪廻転生へと関連づけられていく。
そして、2013年4月に『灰とダイヤモンド』を最終曲として『5TH DIMENSION』が発売された半年後に、ももクロにとって約1年ぶりのシングル『
GOUNN』が発売されるのだが、この曲でも只野菜摘が作詞を担当し、輪廻転生や因果応報を主要なキーワードとして折り込みながら、「新しい自分に出逢う旅」がメインテーマに掲げられた。
こうやって振り返ってみると、『灰とダイヤモンド』と『GOUNN』は、人間の挑戦と成長の苦難を、それぞれ別の角度から捉えた対となる楽曲なのかもしれない。
■歌詞とパート分け
百田 |
ここはどこなんだろう
何ができるんだろう
なぜ 生まれたのだろう
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有安 |
頭の中まで 真っ白になってた
でも 動いていた
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玉井 |
進んでいたはず
それなのにどうして
繰り返す風景
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高城 |
だけどよく見て どこか違うよ
きっと変わっているよ
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佐々木 |
成長していく時の
軌道 螺旋のよう
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百田 |
舞いあがったあと
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有安 |
(いびつな輪を描いて)
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玉井 |
落ちこんでみたり
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高城 |
(ジグザグ沈むな)
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佐々木 |
翼があるみたい
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全員 |
過去よりも高く翔ぶために
助走つけるために
戻って、そして走りだす
閃光(ヒカリ) 夜明け リング
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玉井 |
みんながテーマを持ち寄った世界で
もし音が消えても
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有安 |
ここが好きだよと伝えられるはず
また まちがっても
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佐々木 |
前にも出逢ったような
記憶、つながったら
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高城 |
言葉がほしいよ
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有安 |
(ほんとう解ってる)
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佐々木 |
言葉を超えるよ
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玉井 |
(次の次元への)
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百田 |
新しいやり方
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全員 |
夢から醒めても見る夢が
胸を飾る 揺れる
だいじなものは多くはない
愛を結ぶリボン
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有安 |
一緒にいない私たちなんて二度と
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玉井 |
想像もできないよ
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佐々木 |
ぶつかりながらも ここにいる奇跡は
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高城 |
偶然じゃない すてきな意味があるんだ
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百田 |
薄い膜を破り
芽生えたての羽は
高い壁の前で 広げかたもよめず
けれど 知っていたんだ
悩む前に飛べと
熱いアザをのこして
次の空 めざした
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全員 |
霧が晴れた向こう側
綺麗ごとだけじゃなかった
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高城 |
でもまけないよ
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玉井 |
どんなに
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百田 |
すごい
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佐々木 |
風や
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有安 |
砂にまかれても
|
全員 |
過去よりも高く翔ぶために
助走つけるために
何度も うまれかわってる
閃光(ヒカリ) 夜明け 輪廻
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百田 |
灰のなかのダイヤモンド
本物以外さがせない
|
全員 |
生命(いのち) 燃やしつくすため
一緒にいまを生きていく
|
■その他
・ロックバンドGLAYの唯一のインディーズアルバムのタイトルも『灰とダイヤモンド』だが、なぜか英題は「Ashes or Diamonds」になっている
・昭和の大スター沢田研二にも『灰とダイヤモンド』という曲がある。