米子の夜(よなごのよる)

アイドルグループ・ももいろクローバーZのメンバーの結束を固めることになった話し合いのこと。
それぞれが胸の内を打ち明けたことにより、メンバーの成長のきっかけとなった。

とくに有安杏果にとっては、他のメンバーとの関係が大きく変わる契機となる出来事だった。

 
■メンバーだけで2時間話し合い

「米子の夜」の話し合いが行われたのは、2012年6月30日。夏のツアー「SUMMER DIVE2012 夏の馬鹿騒ぎ」の米子大会のライブ終了後のことだった。

この夏のツアーは、セットリストをほぼ完全に固定して、何度も同じ曲順でパフォーマンスした最初のツアーとなった。初期のももクロは、何度もライブに足を運んでくれる少数の固定ファンに支えられていたため、彼らを飽きさせないためにツアー中のセットリストをどんどん変えていた。

それが2012年夏のツアーから曲順を固定するようになり、同じ曲順を何度もパフォーマンスすることでじっくりと作り込んでいくことを学んだ。

その一方で同じ事を繰り返すために、気の緩みが出てきたことにスタッフやメンバーが気がつき、話し合いを行った。その中でメンバーだけで話し合った方が良いと川上アキラが判断し、メンバーのみで長時間の話し合いが行われた。 

このときのことをUstream放送「梶原放送局 #36」で演出家の佐々木敦規が以下のように述べている。

佐々木 ちょうど折り返し地点だったので、セトリを今回固めまして、同じセトリでずっと回ってきているんですけども、いい部分と悪い部分がある。悪い部分でいうと、ちょっと緩みというか、そういうのを、僕もそうですし、川上さんもそうですし、振り付けやっている石川ゆみ先生もちょっと感じたところがあって、アレ?ていうところがあったので、1回話し合ったんですね。そうしたら、メンバーも同じ事を思っていて、やっていながらね、そこで、メンバーがいろいろもし溜まっていることがあったんだったら吐き出そうぜって川上さんが言い出して、あとはメンバー内で……。
川上 そうですね。
佐々木 僕らなんかも外へ出て、川上さんも外にでて。
川上 はい。
佐々木 メンバー同士で今後良くしていくためのことを語り会っていましたね。あれ2時間ぐらい、籠もっていましたよね!
梶原 凄いねー。
佐々木 ビックリした。もう、帰りたくてしょうがなかった。
一同 (笑)
川上 予約していた鍋料理屋、行けなかった。
一同 (笑)
佐々木 いや、出てこないんですよ、控え室から。
川上 「むーん」とか言っちゃって 。
佐々木 だからちょうど、気が緩んだわけじゃないけど、ちょうど折り返し地点のアレがでたんでしょうね。


このときは、ももクロChanのカメラさえ入れずに、メンバーだけで話し合うことで、それぞれが胸に秘めていたことをぶつけ合ったことで、一種のカウンセリングとなったようだ。
司会の梶原しげるは、これは仲間内でお互いに修正し合う「ピア・カウンセリング」に相当すると指摘していた。

ライブ終了後に2時間ということは、夜の9時から始めても11時まで話していたことになり、止めずにそれに付き合ったスタッフもたいしたものである。

■いまだったら、まだそれを修正できる

QuickJapan Vol.104のインタビューで、佐々木彩夏もこの米子の夜について語っている。
佐々木プロ」とあだ名されるほどプロ意識の強い佐々木彩夏は、米子の夜がももクロのパフォーマーとしての意識の底上げに役立ったと考えているようだ。

彩夏 じつはツアーの最中にみんなで話し合ったんです。
−− 話し合い? 反省会みたいなことですか?
彩夏 はい。途中で「本当にこのまま最後までいっちゃっていいのか?」ってことになって、ちょうど半分のところ、米子(六月三〇日)が終わったあとに、みんなで。
(中略)
彩夏 常に意識は高く持っていようと思っていても、どうしても緩む部分ってあるじゃないですか? それをツアー中にも感じたんですよね。たとえば、リハの時間をどう使うか? 毎日、朝、会場に入ってからしかリハをする時間がないから、本当に限られているんですよ。
(中略)
−− もっとメリハリをつけて、限られた時間を有効に使おう、と。
(中略)
彩夏 私だけでなくて、みんなが思っていることを遠慮なく話して、全員が納得するまで話し合おうって。本当にみんな泣きながら、二時間ぐらい話したのかな? そうしたら、その日がまさかの五人部屋で(笑)、ホンネで話し合ってよかったなぁって。
−− 忙しいと、どうしてもそのあたりは後回しになりますから。
彩夏 本当はみんなで同じ方向を見ていないといけないんだけど、気がつかないうちに少しずつズレていたりするんですよ。でも、いまだったら、まだそれを修正できる。放っておいたら、もうどうすることもできなくなるかもしれないんじゃないですか?
−− なるほど。それはツアー中に修正できてよかったです。 (中略)
彩夏 本当にももクロのメンバーって不思議な感じですよね。学校の友達とは、こんなに本音で泣きながら話すことなんてないじゃないですか? じゃあ、家族みたいな感覚なのかというと、それともまた違うし。仕事をしている仲間、というだけじゃない不思議で素敵な関係だとすごく思いました。

(QuickJapan Vol.104 p.143)


■微妙な壁がなくなった

一方、有安杏果にとっては、米子の夜は、ほかのメンバーとより深くうちとけるきっかけとなったということをQuickJapan vol.105のインタビューで答えている。

杏果 この夏、自分の中でひと皮剥いたんです。
−− ひと皮剥けたではなく「剥いた」んですね。それはどういうことでしょう?(中略) 
杏果 きっかけは夏のツアーの米子大会(六月三〇日)の夜ですね。ライブが終わったあと、みんなですごい話し合いをしたんですよ。
−− はい 。それは前号に登場してくれた、あーりんも話してくれました。
杏果 それがきっかけで、あの夜を境に、自分の皮を、まるでゆで卵の薄皮のように少しずつポロポロ剥き始めて……自分的にはだいぶ剥がせたかなって思っているんですよ。
−− 差し支えがなければ、そのときのどんな話しがきっかけになったか教えてもらえますか?
杏果 私、それまでメンバーとの間に微妙な壁を作っていたんですよ。それをみんなに指摘されたんです。
−− それは本当にぶっちゃけた話し合いですね。そもそも有安さんが積極的に絡んでいけなかったのはなぜなんでしょう? 途中からももクロに参加したという遠慮みたいなものがどこかにあったんですか? 
杏果 私からすると、別世界に見えたんですよ。みんなオンもオフもないじゃないですか? 楽屋でキャッキャッ騒いだまま、ステージに向かっていく、みたいな。それを見て「あっ、私はこのノリは苦手かも」って、決めつけちゃったんですよね。最初に。だったら楽屋では一歩、引いておこうって。
(中略)
−− ただ、ほかのメンバーからしてみれば、輪の中に入ってきてほしかったんですね。
杏果 それを米子で指摘されたんです。最初に言われたときは、みんなの気持ちが痛いほど伝わってきたから、とにかく心に言葉が刺さりましたね。本当に痛かった。
(中略)
杏果 でも、人ってそんなに簡単に変われないじゃないですか? だから、ゆで卵みたいに、ゆっくり少しずつ剥いていったんです。それは大変なことではなくて、いままで無理だと思い込んでいただけで、実際にみんなの輪の中に入ってみたら、全然、違った!

(QuickJapan Vol.105 p.072)
 



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