アイドルグループ・ももいろクローバーZの10枚目のシングル表題曲。
作詞:只野菜摘、作曲:しほり、編曲:木村篤史
2013年11月6日発売。11月18日付けのオリコン週間シングルランキング(集計期間:11月4日~10日)で初登場2位。前年11月発売の9thシングル「サラバ、愛しき悲しみたちよ」に並ぶシングルの自己最高位タイ記録だが、初週売上は7.8万枚で自己最高となった。
■新しい自分に会いに行く
「新しい自分に会いに行く」をテーマとした曲。
百田夏菜子
「自分のことを見つめ直せるような曲」(Soup. 2013年12月号 p.49)
「全部のフレーズに伝えたいことが詰め込まれてて、大好きです」(音楽と人 2013年12月号 p.9 )
玉井詩織
「前回のアルバムの最後の曲(灰とダイヤモンド)に、輪廻って言葉が入っていて、そこから新曲に繋がっているんですよ。輪廻転生で、ももクロがまったく新しい旅をスタートするって」(音楽と人 2013年12月号 p.13 )
佐々木彩夏
「聞いているうちに耳から離れなくなる曲」(Soup. 2013年12月号 p.49)
有安杏果
「ももクロらしさもあり、新しい要素も」(Soup. 2013年12月号 p.49)
「最初に聴いた時は、珍しくキャッチーだな、って」(音楽と人 2013年12月号 p.21 )
高城れに
「大切な何かを改めて再確認したくなる」(Soup. 2013年12月号 p.49)
「聴く人によって捉え方や思うことが違う曲です!」(音楽と人 2013年12月号 p.25 )
2013年4月に発売されたももいろクローバーZのセカンドアルバム「5TH DIMENSION」では「5次元」の世界を巡るさまざまな歌で構成され、同名の2013年春ツアーでは、アルバムの世界観をそのまま再現するというステージ構成となった。
1年ぶりのシングルとなった「GOUNN」というタイトルは仏教の「五蘊」を意味しており、5TH DIMENSIONのSF的世界観や前年のシングル「サラバ、愛しき悲しみ立ちよ」の西欧ダークファンタジー的な世界観に対して、東洋・インド神話的なイメージで構成されている。
キングレコードの宮本純之介は、「ももクロの曲は映像イメージを決めてから作り始める」と述べているが、その方向性を踏襲し、ビジュアルも含めたコンセプチュアルな曲作りを、アーティストとしてのももクロの個性として定着させた感がある。
また、 「五次元」「五蘊」と「5」をマジックナンバーとすることで、ももクロの魅力の源泉がメンバー 5人の強烈な個性にあることを印象づけている。
■五蘊(GOUNN)は、肉体と心の動き
仏教における「五蘊」とは、人間の肉体と精神を五つの集まりに分けて示したもの。
次の5種からなる。
肉体、心の動き、行動を表すということは、人が生きる様のすべてを表しているともいえる。
仏教の四苦八苦の中には「五蘊盛苦(ごうんじょうく)」というものがある。
自分自身が生きている(心身の活動をしている)だけで苦しみが次から次へと湧き上がってくることであり、前出の五蘊が現実世界と対応するなかで、対象に執着を持つことで苦しみが生まれるとされる。
「GOUNN」の歌詞は、好きな相手や、世間に対して執着する心を捨てきれないことを告白しつつも、心を平静にたもってお互い明るく生きていくことを願ったメッセージソングとなっている。
「GOUNN」のMVの中では、百田夏菜子が中心にいて、4人がそれを取り巻くシーンがある。これは百田が人間の肉体を意味する「色」で、4人が心の動きと行動である受、想、行、識を表しているのかもしれない。
■GOUNN文字の秘密
この曲の公式サイト http://gounn.jp では、ビジュアルイメージに使われたオリジナルフォント「GOUNN MOJI」をダウンロードできる。 http://gounn.jp/gounn_moji.html
GOUNN文字は、アルファベットと数字だけのフォントだが、これをパソコンにインストールしてメンバーの名前をローマ字で打つと、五蘊の各文字(漢字)に自動変換される。
- kanako → 色
- shiori → 受
- ayaka → 識
- momoka → 行
- reni → 想
メンバー5人の個性が、五蘊の5つのキーワードにそれぞれマッチしていることを表しているようだ。
(※発売されたGOUNNのシングルのブックレットには上記の五蘊と五人の対応が明記されていた。)
■歌詞解釈
※筆者は仏教の専門家では無いため、間違いを含んでいる可能性があります。
また歌詞解釈も筆者独自のもので、内容を保証するものではありません。
担当 | 歌詞 | 言葉の意味 | 解釈 |
---|---|---|---|
【一番】 | |||
百田 | あなたに逢いたいよ 旅路は永遠の彼方 諸行無常のどこかに 決して変わらぬもの |
諸行無常=すべてのもの(諸行)は、一瞬といえども同一性を保持できない(常は無い) | なにもかもはかない世の中でも、あなたへの思いは決して変わらない。 (「<あなたに会いたいよ>っていうのは(中略)もう一人の理想の自分に会いたい、て意味もある」音楽と人 2013年12月号p.25 高城れに) |
有安 | 煩悩なのかな、この愛 ぜんぜん無欲になんかなれない |
煩悩=心を乱し悩ませる、欲望 | あなたへの愛は私の心を乱し悩ませる。この気持ちを止めることはできない。 |
佐々木 | なんにも言わないでも神通力でわかる 前世も一緒にいたような カルマ |
神通力=超人的な力。超能力。仏教において仏・菩薩は6種の神通力=六神通を持つとされ、そのうちの「他心通」は相手の心を識ることができる。 カルマ(業)=人間の行為、行動。その結果、人は果報(むくい)を受ける。 |
あなたの気持ちは何も言わないでもわかる。まるで前世でも一緒にいたかのように、二人の行動は一致している。 |
玉井 | うんとへこまされ泣いた日 そんなことのほうが忘れられない |
||
高城 | そっけないんだけど本当はやさしい 追いつきたい よく似てる人 |
あなたは素っ気ないようで、本当はやさしい。 自分によく似ているけど、人格的にはより成長している、あなたに追いつきたい。 |
|
百田 | がっばってがんばって積みあげた原石 木っ端みじんに崩れ落ちていた 迷いのせいだよと |
頑張って頑張って積み上げた原石=あの世とこの世の境目にある三途の川の河原(賽の河原)で、死者が石を積み上げて塔を築こうとするが、鬼がきてそれを突き崩してしまう、という苦行があるとされる(本来の仏教とは関係のない俗信)。 | 自分という原石を積み上げて人格的な成長を目指したけど、気持ちの迷いのせいで、なかなかうまくいかない。 |
全員 | マヤカシ百鬼が からかうカラカラ嗤う | 百鬼=日本の説話に登場する、さまざまな鬼や妖怪。本来の仏教とは関係ないが、上記の賽の河原の鬼のイメージと重ねられていると思われる。 | (そんな風にひとりでカラ回りしている自分を)たくさんの子鬼があざ笑っているようだ。 |
全員 | ほんものの奇跡は よい因果応報の果て 奇跡じゃなくて 自分の |
因果応報=「善い行いが幸福をもたらし、悪い行いが不幸をもたらす」とする考え方。仏教では輪廻転生によって人は因果応報を繰り返すが、それを超えたところに悟り(救い)があるとする。 | 心の成長は、善いことの積み重ねで実現する。それは奇跡なんかじゃなくて、自分自身の心のうちにあるものに従っているだけ。 |
佐々木 | 中から | ||
玉井 | 導く | ||
百田 | 未知の力 | ||
全員 | いつでも逢いたいよ 不思議なシンクロニシティで 魂の奥 つながっている |
シンクロニシティ=偶然の一致 甘露=中国古代の伝承において、徳の高い王が現れると天から降ってくる甘い液体。インド神話の不死の霊薬とも同一視されている。さらに仏教では「悟り」「教え」の意味もあり、そこから「正しい道へと手を差し伸べてくれるもう1人の自分」という解釈もできる。(当記事コメントより) |
偶然の一致が続いてあなたと何度でも会えたらいいのに。 私とあなたは心の奥で繋がっている。 あなたに触れるととても幸せな気持ちになる。 |
有安 | ふくれた | ||
高城 | 感情 | ||
全員 | あなたの 手の平 | ||
有安 | 甘露の匂い | ||
全員 | シャンバラヤ・遮二無二・無二 残念な街の上を 残酷な鬼が通る |
シャンバラ=理想の仏教国。語源はサンスクリット語で「(幸福を)維持(もしくは用意、収集、養育)するもの」などの意味。「シャンバラヤ」は「シャンバラや」の誤植の可能性がある。 遮二無二=ひとつのことをがむしゃらにすること。「遮二」は二を断ち切る意。「無二」は二がない意で、前後の見通しも考えないで行うこと。 アマノジャク(天邪鬼)=仏教では人間の煩悩を表す象徴として、四天王や執金剛神に踏みつけられている悪鬼。日本の説話においては人の心を察して口真似などで人をからかう妖怪。転じて現代では「ひねくれ者」「本心に素直になれず、周囲と反発する人」を意味する。 |
幸せになりたいと強引に頑張っても、残念な結果にしかならない。 さまざま欲望やひねくれた心が邪魔をしようとするけど、けっして弱い心には負けない。 |
佐々木 | 心で暴れる | ||
玉井 | アマノジャクを | ||
高城 | 浄化してみせる | ||
全員 | 怪シ百鬼 | ||
【二番】 | |||
佐々木 | 大丈夫ひとりでできるって 遠ざけたのは 知ってほしいから |
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玉井 | こんな時ばっか頼るのはいやだな 折れたりしない姿見せたい |
||
高城 | こんなにもこんなにも 呼ばれてる惹かれる | ||
有安 | 天も地もなく愛する境地へ 翔んでいけるのか | ||
全員 | 問いかける声が どうや?とドヤドヤわらう ちぎれそうな想いに もう名前はつけないよ 恋とか友情だとか |
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百田 | 全部を | ||
佐々木 | 超えてる | ||
有安 | すべてがある | ||
全員 | あなたに逢いたいよ 睡蓮の道のどこかで 魂の奥 繋がっている |
睡蓮=スイレン。仏典においては蓮(ハス)と睡蓮は同一視されており、泥水の中から生じ清浄な美しい花を咲かせる姿が仏の智慧や慈悲の象徴とされる。 | さまざまな思いや欲望がうずまく感情を清めて ともに静かな落ち着いた気持ちで、あなたと会いたい。 |
高城 | うずまく | ||
玉井 | 感情 | ||
全員 | きよめて ゆきたい | ||
【三番】 | |||
百田 | いつかは終わりゆく それが定めだと聞いた | 盛者必衰=この世は無常であり、勢いの盛んな者もいつかは衰え滅びるということ。 化身=仏が命あるすべてを救うために、現世に出現する際の姿。釈迦もそのひとつとする。 |
なにもかもがいつかは終わって消えてしまうというけど、 私のこの気持ちは 昇華することで終わらせないようにしたい。 |
有安 | 盛者必衰 | ||
高城 | でもおことわり | ||
玉井 | 私は | ||
佐々木 | 私の | ||
百田 | 化身に | ||
全員 | なりたい 嗚呼 | ||
全員 | ほんものの奇跡は よい因果応報の果て 奇跡じゃなくて 自分の |
心の成長は、善いことの積み重ねで実現する。それは奇跡なんかじゃなくて、自分自身の心のうちにあるものに従っているだけ。 | |
高城 | 中から | ||
百田 | 導く | ||
玉井 | 未知の力 | ||
全員 | 気づかされるために 激動の河に圧された 生キトシ生ケル モノノマンダラ |
マンダラ(曼荼羅)= 仏教の世界観、宇宙観をシンボルや文字を使って象徴的に表した仏画など。転じて、膨大な要素が支え合うような宇宙観を指すのにも使われる。 | この世界はさまざまな命と魂が関わり合いながら生きている。 さまざまな困難に出会ったことでそのことに気づかされた。 |
佐々木 | 祈りの | 自分の存在を支えてくれたすべてに感謝の気持ちを込めて みんなの幸せと平和を願い、祈りたい。 |
|
有安 | 願いの | ||
全員 | 言葉を おくるよ | ||
百田 | 感謝を込めて | ||
全員 | シャングリラ・遮二無二・無二 残酷な鬼が誘う そっちの道は邪の道 |
シャングリラ=イギリスの作家ジェームズ・ヒルトンが1933年に出版した小説『失われた地平線』に登場する理想郷の名称。転じて、理想郷の別名として使われる。小説のシャングリラはチベットの未知の地域にある僧院で、シャンバラにヒントを得ている可能性がある。 | 強引に幸せへの道を目指せと、心の内の鬼が誘うけど、 それは邪悪な生き方で、入るのは簡単だけど抜け出すことができない。 そんな誘惑には惑わされずに気高く生きていきたい。 |
高城 | 入口はよい良い | ||
佐々木 | 出口はない | ||
玉井 | だまされないよ | ||
全員 | 怪シ百鬼 |
■衣装
GOUNNの話題のひとつが、仏像にインスパイアされたとされるド派手な衣装である。これは、ウクライナ出身で米国在住の新進デザイナーElena Slivnyak氏がデザイン・制作したもの。
頭の背後に背負った円形は、仏像のオーラを表した“光背”に相当するもので、大小2種類のサイズがあり、大きい方は「3kgくらいある」と玉井詩織がたびたびTVで発言している。取り外しが可能で、TVでは自分たちで外して起きながら、「これを外すのは私たちにとってカメラの前で裸になるくらい恥ずかしいことなんです。イヤ~ン」としなを作るのがお約束になっている。
ミュージックステーションでは小さい光背をつけたまま歌ったほか、トークでは、高城れにが手元のスイッチで光背が発光できることを実演した。
HOTWAVEに出演した際は、玉井が外した大きな方の光背を膝の上に乗せて「お茶にしますか」「中華テーブルにもなるんです」とふざけたり、床に落としたりと雑な扱いをして、佐々木から「大事にしてね」とやんわりと注意されていた。
佐々木彩夏はこの衣装について「こういう衣装を着てる人を見たことないから、どれが正解なのかいまいち分かんないです(笑)。未だにポーズをどう取ったらいいか悩みます。(中略)ライブでは少し小さいタイプを使ってます。それでも今の自分の幅が認識できなくて、よく人やモノとぶつかってますけど(笑)」と述べている。(音楽と人 2013年12月号 p.17)
■振り付け
ボリュームと飾りの多いGOUNNの衣装のため、振り付けに苦労したことが、ラジオ「ももクロくらぶxoxo」で明らかにされた。衣装を着てみてから、予定していた振り付けが踊れないことがわかったり、どんな振りが一番きれいに見えるかを考えたりしたという。
れに 「そうだね、久しくさ、この振りを付けるときさ、すごい手こずったよね」夏菜子 「あの今回は、あれだよね普段はさ、あの、振りを付けて、衣装を着て、あの、いろいろさ、あ、これじゃ踊れないとかってなるけどさ、今回は、もう衣装を着た上でどんな振りが一番綺麗に見えるかっていうのをやったの初めてじゃない?」詩織 「3回ぐらい変わったよねサビのね」
れに 「で、PVを撮る当日にも振りが変わったり、最後のポーズもその日だったよね」彩夏 「最後のポーズもなかなか決まらなかったね~」杏果 「最後のポーズさ~、1時間近くっていうぐらい悩んで」夏菜子 「だってその日中に決まらなかった」彩夏 「そうそう。保留になったもんね」
■動画
・ももいろクローバーZ「GOUNN」MV
前出の玉井の発言で、5TH DIMENTIONとの繋がりがあるとされているが、このMVの冒頭でも、「BIRTH O BIRTH」のMVの最後で百田夏菜子が飲み込んだ飴(?)と同じ5色の配色の球体が登場している。
・ももいろクローバーZ「GOUNN」30秒CM
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正しい道へと手を差し伸べてくれるもう1人の自分、という解釈もできると思います。